県域水道一体化 企業団発足25年後に奈良市が料金で競り勝つ試算 懇談会で示す
奈良市独自の料金試算が示された第3回「市県域水道一体化取組事業懇談会」=2022年7月12日、同市役所
奈良市は12日、同市役所で開いた「市県域水道一体化取組事業懇談会」(座長、浦上拓也・近畿大学教授、11人)の第3回会合において、市単独で水道事業を行うと、将来、県試算の一体化企業団の料金より値段が下がる可能性がある試算を示した。
市企業局によると、県が昨年12月に試算した最新の一体化料金シミュレーションには、奈良市の緑ケ丘浄水場から生駒市に用水を供給する際に必要な水質維持のための年間高度処理費約2億8000万円を計上していない。
また、県試算の委託費、建設費、人件費などの縮減率について、他県の水道広域化の経営実例を調べたところ、県の値をもっと下げた方が現実的であるとした。さらに給水収益に対する借金(企業債残高)の比率を将来負担の観点から見直した。
これらの条件により、年間の投資額を110億円と仮定すると、一体化の企業団は発足予定の2025年、1立方メートルあたり177円と、現試算換算値より6円高くなり、奈良市単独の料金と並ぶ。その後、人口減少下にあっても、2050年に市の料金は、企業団の料金より12円安くなるという。
同投資額なら、県が現行の試算を見直さない場合でも、2050年に、1立方メートル当たり2円、奈良市が安くなる計算が示された。
山本憲宥委員(市議、自民結の会)は「県域水道一体化の構想が国庫補助金を有利に得て、耐震化などがどう進んでいくかなどの観点からも今後の会議で説明が必要」と意見を述べた。
大西淳文委員(市議、日本維新の会)は、全処理区統一の流域下水道・維持管理負担金について、四つの処理区浄化センター別の処理原価と市町村負担金の現状を述べ、「奈良市は割り勘負けしている」と図示し、27市町村と県営水道が事業統合する行方を占うものとした。
浦上座長(経営学)は、家庭向けの廉価な水道料金が実現する背景には大口の企業消費が支える独自の仕組み(内部補助)があると解説。下山朗委員(大阪経済大学教授、経済学)は「奈良市民も県民である」と水道の広域化に一定の理解を示した。 関連記事